マネージャーのコンピテンシー

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 先日、企業の人事部門の方々のフォーラムに参加する機会があり、ある企業様内の人事施策や人材育成活動の説明とそれについての意見交換がありました。その席でコーディネーターの某大学の先生が嘆いていたことがありました。先生曰く、「最近はマネージャーの教育として、コミュニケーションだとかコーチングだとかファシリテーションだとか取りざたされているが、これらはマネージャーが成果をあげるためのツールで枝葉の部分である。本来マネージャーの育成のために教育すべきは、PDCA(Plan、Do、Check、Actionのマネジメントサイクル、提唱者の名前からデミングサイクルとも呼ばれます)を回して成果を出すことそのものである。最近はこのベイシックの部分にあまり陽が当たっていないように思える。教材も少ないのではないか。」 これに対して参加者の皆さんも同意のような反応でした。

 考えてみると、ずっと以前はマネジメントというとPDCAのデミングサイクルとか問題解決あるいは課題解決などがキーワードでしたが、ここ10年は、マネジメントを語る場合のキーワードとしてコミュニケーションだとかコーチングだとかファシリテーションなどという言葉が登場するようになったように思えます。その分PDCA、問題解決、課題解決などの影が薄くなったような印象もあります。この先生はこのことについて、もっと基本に戻ってマネージャーを育成しようよと言われているのだなと思い、共感もいたしました。

 さて、コミュニケーションだとかコーチングだとかファシリテーションというのは、このブログにおけるテーマの一つであり、筆者はしばしば取り上げています。これらはマネージャーが備えるべき資質として当然のものとして考えてきましたので、先生のことばをお聞きしてもう一度整理してみました。

 まずマネージャーとは何か・・・よくいわれる定義は
  「人を使って成果を出す人」
があります。もうすこし丁寧に言うと
  「上位方針に従って、効率的に組織を動かして効果的な結果を出す人」
となるでしょうか。つまり自分が自ら実行するのではなく、
  「人や組織を効率的に使って」  「効果的な結果を出す」 
なのです。

 このように定義付けられるマネージャーの活動をレベルアップさせるためには次のようなことが考えられます。

 「効果的な結果を出す」の部分からは、課題設定や問題発掘をし、PDCAサイクルを回して活動を進める。そのために達成度の測定指標を売上高や利益、生産性、不良率などの数値で設定し、見える化するという能力やスキルが必要となります。(これを仮に問題解決系のスキルといいましょう。)

 一方「人や組織を効率的に使って」の部分から、部下の目標管理やモチベーションの向上、職場内のコミュニケーションの促進などの能力・スキルが必要となります。(これを仮にコミュニケーション系のスキルといいましょう。)

 たしかに「結果を出す」ということが最終結果ではありますが、「人や組織を使って」ということが不可欠の手段である限りは、問題解決系コミュニケーション系の両面にわたるコンピテンシーがマネージャーに求められるといえるでしょう。したがって、これらは車の両輪のように両方とも重要であり、そしてまた、この枠組みを研修などの教育プログラムの冒頭で明確にすることが受講者の理解のためにも大切だと筆者は思います。

 ところが、今行われている研修や、ビジネス書では、この枠組みをきちんと整理して伝えることがあまり見られず、いきなりどちらかのコンテンツに入ったり、最近はコミュニケーション系が全てのような言い方になっていることもあるように思います。これが冒頭の先生が言われていることにつながっているのでしょう。

 バーナードという経営学の先生は、公式組織が成立する条件として
  「共通目標」
  「貢献意欲」
  「コミュニケーション」

の3つが必要だといっています。組織の目標を達成するためには、構成メンバーがその目標を共有し、互いに貢献しようと欲し、そのためにコミュニケーションが必要なのです。だとするとコミュニケーション系は枝葉のスキルではなく、問題解決系のスキルを発揮するための基盤のようにも感じているところです。
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冒頭の写真:熊本城に隣接する細川刑部邸、昔の上級武士の暮らしぶりがわかる邸宅です。ひっそりとした落ち着いた場所でたいへん癒されました。
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by atanabe-coach | 2008-10-26 23:30
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